爺ちゃんと燃したおがら

子どもの頃、爺ちゃんと、クッキー缶のフタの上で、おがら(麻の茎)を燃やした。迎え火と送り火だ。その火が、お盆の期間に先祖の霊を迎える道しるべとなる。故人は、お盆に家族のもとへ帰ってくる。

仏壇には、4本足のついたキュウリやナスも飾る。電気じかけで模様がくるくる回る灯篭もあった。いわゆる走馬灯。ばあちゃん家ならではのお盆の光景だった。

注)キュウリは馬。ナスは牛。足の速い馬でこちらへ来て、文字どおり牛歩の牛であちらへ戻るという意味があるそうだ。

盆踊りの起源、二人の僧

盆踊りの起源

盆踊りは、日本の原風景である。日本人で盆踊りに行ったことのない者はいないだろう。あの太鼓の音を聞いて、心踊らぬ者はいない。

盆踊りの起源には、二人の僧がいる。日蓮宗の寺の盆踊りでこの名を挙げると日蓮上人に一喝されそうだが、どうにも仕方がない。誰か。

一人は、平安時代の空也上人(くうやしょうにん)である。諸説あるが、空也上人の踊念仏が、盆踊りの起源とされるようだ。

この空也上人の踊念仏が念仏踊りとなり、鎌倉時代のもう一人の僧に影響を与えた。

一遍上人(いっぺんしょうにん)である。

なお、上人(しょうにん)というのは、僧侶の敬称である。

一遍上人は、鎌倉時代に時宗を興した。浄土宗の一派になる。「南無阿弥陀仏」と書かれた賦算(ふさん)と呼ばれるお札を配り、念仏踊りをした。信者のあり方に対しては、大らかな宗派である。

踊りにその身を預けて、法悦にも至るのだろう。ユニークだ。

神奈川県藤沢市に時宗の総本山 遊行寺(清浄光寺)がある。立派な寺だ。「捨ててこそ」どちらかと言えば、仏教の権威性に否定的だった時宗に寺があるのは少し不思議だろうか。この寺は、一遍が亡くなったのちに建立された。

この神奈川の藤沢で、一遍は一大念仏踊りを行った。そうして、宗教的儀式である念仏踊りは、大衆参加の芸能的な行事である盆踊りへ発展していった。

言うなれば、藤沢は盆踊りの聖地なのだろう。日本中の盆踊りはここから広まっていった。オリジナルの踊りが見られないのは残念だが、今では創作された遊行おどりというのがある。ここのお祭り「遊行の盆」では、著名な阿波、郡上(ぐじょう)、西馬音内(にしもない)からも踊り子を迎えている。

注)空也上人の行ったものは踊念仏、一遍上人の行ったものは念仏踊りと言われるようだ。形式的な違いがあるのだろうが、同義の言葉として使われているのも散見される。

池上本門寺の納涼盆踊り大会

池上本門寺の盛大な盆踊り

ちょうちんの連なりが、長い。やぐらもしっかりしたものが建てられている。境内が広いので、なかなか立派な盆踊りだ。

  • みたままつり
  • み魂(たま)まつり
  • みたま祭り

表記が、バラバラだ。ネットでは「みたま祭り」の表記が多いようだ。一応、池上本門寺の公式サイトにならい「みたままつり」とした。

「みたま(魂)」なのである。この「まつり」は、先祖供養なのだ。盆踊りは、楽しく踊るフェスティバルというだけではない。ひょっとすると、よく知らない海外の人が見れば、踊りということしかわからないかもしれない。

盆踊りには陰影がある。盆踊りにあるのは「楽しい」という感情だけではない。

今年も、一緒におがらを燃した爺ちゃんが、家に帰ってきているだろう。

P.S.

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